そしてYFKの“Y”もメジャーの舞台へ2007年11月29日 22時17分00秒

とうとう“YFK”の最後の砦、今シーズンでもコバマサの不調から「最後の砦」を担った薮田投手が、今シーズンのホールドポイントのタイトルを引っ提げて、海を渡ることとなった。契約に至った球団は、昨今では万年最下位のカンザスシティー・ロイヤルズ。契約内容は、2年総額600万ドルという破格の内容。この破格の契約にある背景にはやはり、メジャーにおけるマーケットの規模の大きさと健全な経営球団がなされていることを如実に表している。
ところで、カンザスシティは、アメリカの「カントリーロード」の代名詞と言われるような人恋しくなるような場所かと思いきや、カンザス州とミズーリ州に跨るこの大都市圏は、古くからミズーリ川とカンザス川が合流する交通の要衝として発展し、昨今でもアメリカの産業の根幹を成している地域であるらしい。
薮田がカンザスシティを選択したのは、日本球界を知り尽くすヒルマン監督の誘いと球団からの好条件の提示の他に、このような大都市圏と田舎が同居する環境が、慣れ親しんだ千葉と重なるような心境もあったのではなかったかと思う。

薮田投手は、この万年最下位のチームの中継ぎのエースとして期待されることになるであろうが、伸びのあるストレートに加え、チェンジアップ、フォークを駆使し、さらに制球の良さを考えれば活躍できることはほぼ間違いないであろう。また、打者が二巡することが多くない中継ぎ役であるのと、メジャーでは投げる投手がそれほど多くないフォークボールが大きな武器になること、また去年のWBCではアメリカを完全に抑えているなど、その実力は折り紙付きであり、活躍できる要因は幾らでもあげられるだろう。
薮田投手には、ロッテの誇り、そして日本人としての誇りを持って、しっかりメジャーの舞台で軌跡を残してほしいと思う。

しかし、日本人としてメジャーで活躍できる選手が増えるのは喜ばしいことであるが、日本球界の空洞化は近い将来に起こり得るものとして、大きな懸念材料だ。
以前にも述べさせて頂いたが、日本球界は、マネーゲームでは到底メジャーにおけるマーケットの規模の大きさから言って、到底太刀打ちできない。
昨今のメジャーリーグ全体では、人材難が発生し、日本球団とのFA選手の獲得であれば、ドラフトの上位指名権を保障として譲渡する必要があるメジャー球団同士のFAよりも損失がないことと、日本選手の評価の高さも相俟って、日本市場が草刈場になってしまっている。
また、選手側から見れば、年棒の高さに加え、社会保障の充実(例えば年金制度)、そしてプロになるような人たちであれば上昇志向を持っているのが常であろうから、レベルの高いリーグでプレーしたいと思うのが本望であろう。
さらに、選手生活は短いもので、第二の人生という転機が必ず訪れる。その時、プロの一線で活躍できるのはごくわずかであり、解説者や評論家などで生計を立てることができるのもさらに極わずかであり、多くの現役生活を終えた選手たちが、同年代の人たちよりもサラリーが劣るようになるだろう。それを考えたら、金銭面の待遇に対して拘り続ける気持ちを大事にして上げたいことも確かだ。それに、一般企業でも重責を担う地位ほど、多額の報酬が得られるように、プロ野球選手は多くの人間の夢と希望を一手に受け持つ立場であるのだから、大事にしてあげたいと思うのは当然である。
ざっと上述した事柄だけでも、今後もメジャーへの流出は避けられないであろう。しかし、流出を阻止する最善の策は、球団の真摯な対応であることが一番であることは確かなのだが、私たちファンからの声援が何よりの緩衝材であり、フィルタになることが、少なからず存在していることも確かである。
とは言え、この問題はNPBなどで、兼ねてより問題提起されている事柄であるから、私などがあれこれ述べる必要もないのだが、この事に関しては、また別の機会で取り上げさせて頂きたいと思う。

さらに脱線してしまうようであるが、来期のロッテに話を移させて頂くと、今シーズンの川崎を初め、荻野、内などの若手が実力の片鱗を見せ始め、また、実りのあるドラフトになったことは喜ばしいことであるが、今シーズンのコバマサの不調で回ってきたクローザーを兼任していた薮田投手のいなくなった穴は、来期優勝を狙うチームにとっては厳しいように思う。
来期を若手育成のシーズンとして考えているのならば話は早いが、若手を育てながら優勝を狙うことに至極困難であることは確かだ。今のような抑えを固定できない状況であれば、打順のように、継投も流動的な「ボビーマジック」に期待することしかできないだろう。しかし、このことに、私の心の中で、一筋の希望と一抹の不安が同居している事は否めない。それでも、ファンとしては応援するしかないのが実情だ。そう期待するしかないだろう。

そう、大丈夫。薮田投手の穴はチーム力で埋めることができると信じている。だから、心置きなくメジャーで全力投球して下さい。日本から応援しています。